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メイズ・オレンジ

 イッチョメがクレヨンの箱を開けると、オレンジだけが入っていなかった。
「あれー?」
 花柄の巻紙が可愛い、三角頭のお気に入りのクレヨン。昨日ちゃんとしまったのに、おかしいな。
「あれれー?」
 その代わりというか、オレンジのスペースにはクレヨンのサイズに丸められた紙が入っている。
「むー……」
 キンチャクから紙を受け取って広げたら字がびっしりだった。読む気が起きない。こういう時は、
「もみあげー!!」
 叫びながら、あぐらをかいていたブロックの背中にドーン。
「ぐふッ」
 子供と言えど、全力の体当たりだ。不意打ちを食らってブロックは咳込んだ。
「げほッ、な、なんだよッ」
「これ読んで!」
 そう言ってイッチョメはブロックの背中によじ登って紙を差し出す。
「あん? 何々、えーっと」

『はりえんじゅ あやめ パンジー ピラカンサス やまぼうし』
『ばら イソトマ れんげそう たんぽぽ ふうろそう』
『どくだみ アマリリス ゆきのした』

「――ってなに?」
 イッチョメが尋ねる。
「なんだコレ?」
 しかしブロックも首をかしげた。
「パンジーとばらは花の名前だよな。あやめ、も花か。アマリリス、どっかで聞いたことあるな……っていうか、これ全部花か?」
「ぜんぶ、お花さんなの?」
「……たぶん」
 ブロックが花に詳しいわけがない。
「これ、何処から持ってきた?」
「クレヨンの箱に入ってたの。あ! オレンジさん、いなくなった!」
「は?」
「オレンジさんのところにコレ入ってたの!」
「あぁ、そういうこと」
 納得してイッチョメから箱を受け取り、中を確認する。
「ん?」
 紙がもう一枚入っていた。
「さっきはなかったよ?」
「んなワケねぇだろ。じゃぁどっから出てきたんだよ」
「チョメ嘘言ってないもん!」
 そう言ってほっぺたプクー。
「えー? うーん、気付かなかっただけか? まぁいいか。何が書いてあるんだ?」
 そう言って紙を広げる。イッチョメとキンチャクも背中から覗き込んだ。

『暫し外出して参るが候 By橙』

「読めねぇよ!!」
 空中に投げつける。紙なのですぐにひらひら落ちた。
「あーあ」
 それをブロックの背中から降り降りしたイッチョメが拾う。
「……オレンジさん、でかけるって!」
 ブロックはぎょっとした。
「何!? お前読めたのか!?」
「うん」
「んな馬鹿な!」
 にわかには信じられず、ブロックはイッチョメの手から紙をひったくり、もう一度文面を見た。

『ちょっとでかけてくるね☆ オレンジさんより』

「……」
 紙の下の方に小さく書いてあった。
「っていうか、誰のいたずらだよ。ペティか?」
 それしか考えられない。
「オレンジさん、帰ってくるかな?」
「ちょっと出かけるって書いてあるから、そのうち帰ってくるんじゃねぇか?」
「どこにいったのかな?」
「さぁ……花でも摘みにいったのかもな」
 クレヨンが(笑)。
「ペティだったら分かるかもしれねぇから、聞いてきたらどうだ?」
「うん、そうする!」
 言うが早いか、イッチョメはぱたぱたとブロックの部屋を出た。



 ――出た、はずが。
「もみあげー!!」
 再び背中にドーン。
「ぐふッ、な、なんだよッ」
「お外ヘン」
「外が変だぁ? 何が変なんだよ」
「木がたくさん並んでる」
「はぁ?」
 意味が分からない。ブロックは仕方ねぇなと独りごちて腰を上げた。
「……」
 ブロックはあんぐりと口を開けて呆然とした。
 部屋の扉を開けたら、目の前には森が広がっているのである。……意味が分からない!
「どうなってんだ、こりゃ……」
 穏やかな木漏れ日が差し込む美しい森。
「あ!」
 地面にオレンジ色したキラキラ輝く線が引いてあるのをイッチョメが見つけた。道しるべか、はたまた通った後なのか、それはブロック達の足下から森の奥へと続いている。
「オレンジさん、きっとこの先に行ったんだよ! 行こう!」
 イッチョメがブロックの手を引っ張った。思わずドアから森へ足を踏み出してしまったブロックだが、すぐに立ち止まる。
「いやいやいや、待て待て待て。何があるか分からねぇからダメだ」
「でもチョメ、オレンジさん使いたいもん」
「そのうち帰ってくるだろ。待っててやろうぜ」
「でも、もう帰れないよ?」
「あ? なんでだよ」
「ドアない」
「何!?」
 慌てて振り返るブロック。そこにあったはずの部屋の扉は跡形もなく消え失せていた。まるで以前からなかったかのように。
「何が……どうなってんだ……」
 こんな馬鹿な話があるのか。
「ねー、もみあげ、行こうよー」
「……」
 ブロックは片手で顔を覆ってうなだれた。これは夢だと思いたかった。夢なら覚めてくれ。しかしどんなに願っても覚める様子は全くない。
「ねー、もみあげー」
 ねーねーねーとイッチョメがブロックの空いている手を引っ張る。
「はぁ~」
 ブロックは深々とため息をついた。こうなったら線を辿って進むしかない。



 新緑並木が続いている。太陽光を受けて鮮やかな薄黄緑色が輝く様は、思わずうっとり眺めていたくなるような優しい美しさだ。
「……」
 とんだ状況に陥ってしまったが、これはこれでいいかもしれない。イッチョメの歩幅にあわせてのんびり歩きながらブロックは思った。今度サンドイッチとコーラ持って森林浴にでも出かけようか。
「ねー、もみあげー。今度みんなでピクニックに行こーよー」
 どうやらイッチョメも同じようなことを考えていたらしい。
「ピクニックかー」
 呟きながらブロックはイッチョメを横目で見下ろした。イッチョメはさっきねだられて作ってやったペンペン草の鈴を指先でくるくる回して遊んでいる。小さく、りりりり、りりりり、と音が聞こえた。
 ペンペン草の鈴は、たくさん付いているハート型の果実の柄をそれぞれ下に引くと、茎から千切れて皮一枚でぶら下がった状態になるので、あとは茎を持ってでんでん太鼓を振るように回すと音が鳴る。ちなみに何故ブロックが作り方を知っているかというと……小さな恋の痛みを伴うのでそっとしておいてあげてほしい。
 ブロックはみんなでピクニックに出かける光景を想像した。メンバーはブロック、イッチョメ、ペティ……と考えたところで、げんなりしてやめた。絶対イヤだ。理由? 言わずもがなだ。
 道はしばらく平坦にまっすぐ伸びていた。しかしふと気が付くとゆるやかな登りになり、頂上の先が見えなくなっている。
「……お前、疲れねーの?」
 ブロックは少し気になってイッチョメにたずねた。
「んーん、ぜんぜん!」
 イッチョメは笑顔で答える。
「そーかよ」
 ならばよし。相変わらず元気なこった。出だしから変わらぬテンションで目を引く花や虫を見つけては足を止め、我に返って駆け足でブロックに追いつく、ということを繰り返している。
「あの先に何かあるのかなぁ?」
 イッチョメがブロックにたずねた。
「何かあるといいな」
 いつまでもこうして歩いているわけにもいかない。というか無限ループは勘弁願いたい。
 ――ということを考えていたら声が聞こえた。
「ぬおー! やめろー! やめぬかー! ぎゃー!」
「もみあげ!」
 イッチョメとキンチャクがブロックを見上げる。
「あぁ、行くぞ!」
 もしかしたらオレンジクレヨンかもしれない。頂上まで大した距離でもないので、二人は一気に駆け上がった。
「あ!」
 道の真ん中にスタニマルがいた。彼はブロック達には気にも止めず、前足で何かをちょいちょいもてあそんでいる。
 オレンジクレヨンだ!
「や、やめ、こら、痛っ」
 あっちへ転がし、こっちへ転がし、そっちに弾きとばされ……踏みつけられる。ぱきっ、と音がした。
「おぅふっ」
「おい、スタニマル!」
「!」
 ブロックに呼ばれ、スタニマルはやっと二人の存在に気付いたらしい。きょとんとした顔をする。
「ごめんね、オレンジクレヨンさん返してくれる?」
 イッチョメが近寄って話しかけると、スタニマルはぺしっとオレンジクレヨンを弾きとばし、木々の中へと駆けていって消えた。イッチョメはばいばーいと手を振ってそれを見送る。
「あいたたたた……」
 細い手足が生えているクレヨンは腰とおぼしき場所をさすって立ち上がった。
「だいじょーぶ?」
 イッチョメはかがんでクレヨンにたずねた。
「いやいや、かたじけない、イッチョメ殿と、ブ……ブラ……ブリ……もみあげ殿」
「……ブロックだ」
 もみあげが定着してる! 訂正しつつも無駄のような気がしてブロックは内心深くため息をついた。
「ねぇねぇ、オレンジさんは何処におでかけ?」
 イッチョメの問いにクレヨンは腕を組んで「うむ」と仰々しくうなずいた。
「拙者、花の札を頂戴しにここへ参ったのでござる」
 変な口調なのはスルーで。
「花札?」
 ブロックは異国のカードゲームを思い浮かべたが。
「いや、花の力が込められた札……えぇと、“かぁど”にござる」
「誰からもらうのー?」
「花の精からでござる。もう少し行くと彼女等の庭園があるのでござるが……情けなや、実は覚え書きを忘れてきてしもうて、戻る途中であの獣に」
 思い出したとたんに怒りが再燃したらしい、クレヨンは拳を握りしめ、わなわなと震え出した。が、すぐに「痛っ」と呻いて腰をおさえる。体に力が入ると折れた所が痛むらしい。
「おぼえがき?」
 イッチョメが首をかしげる。
「メモのことだ」
「メモ!」
 納得して大きくうなずき、イッチョメはポケットから一枚の紙を取り出した。花の名前(たぶん)が書かれたメモだ。
「これ?」
 それをクレヨンに見せると、彼は大いに喜んだ。
「いかにも、拙者の覚え書きにござる! これがなければ術式が完成せぬのでござる! イッチョメ殿、重ね重ねかたじけない!」
 そして深々と頭を下げた。
「……」
 しかししばらくしても下げた頭が上がらない。
「……」
「……?」
「?」
「すまぬ、折れた腰が戻らぬ。戻してくれぬか」
「あーあーあー」
 理解してブロックはクレヨンを拾い、ずれた腰を戻してやった。後でどうにかしてやらないといけない。
「いたた……す、すまぬついでに、花の精の庭園にこのまま連れていってはもらえぬだろうか」
 巻紙一枚で上体を支えているため、歩くのに不自由なのだろう。
「仕方ねぇだろうな」
 根拠はないが、目的を果たさないことにはこの奇妙な状況からは抜け出せなさそうだと確信し、ブロックは諦めて小さく息をついた。まさかクレヨンの歩幅にあわせて進むわけにもいかないので、ブロックはやむなく肩にクレヨンを乗せる。
「じゃぁ、お花さんのお庭にレッツゴー!」
 イッチョメが笑顔で腕を振り上げた。



 花の精の庭園とやらはそう歩かずにたどり着いた。沿道の左右それぞれに6つの鋼鉄の格子門が並んでいる。
「左側の五つ目の門が開いておろう。そこでござる」
 言われて見てみると、確かに左側の5番目の格子門だけが開いていた。
「May?」
 門の脇に立てられたイーゼルにそう書いてある。
「さぁ、早ぅ中へ!」
「分かった、分かったからもみあげを引っ張るな!」
「あははははっ! もみあげがもみあげ引っ張られてるー」
「そこ笑うとこじゃねーよっ」
 中に入ると、そこはまさに花の庭園だった。色とりどり、多種多様な花々が咲き乱れた見事な園が広がっている。
「わー! きれい! きれいー!」
 イッチョメが興奮してぴょんぴょん跳ねた。
「へぇーっ、見事なもんだ」
 ブロックも思わず目を奪われる。
「花の精達よ! そなた等の力を借りたい!」
 花の光景には目もくれず、クレヨンが叫んだ。不意の大声にブロックが驚いて耳を塞ぐ。
 直後。
 ざわっ
「!」
 花達が一斉に振り向いた。
「うわっ」
 その見慣れない光景と視線の量にブロックが怯む。
「わーい、お花さん、こんにちはー!」
 一方のイッチョメは自分を認識してもらえたことが嬉しいようで、元気に挨拶。
『こんにちは、モノアイのお嬢ちゃん』
『ちっちゃいモノアイもごきげんよう』
 応えてキンチャクがむいっと片手を上げる。
『モノアイのおじちゃんもこんにちは』
「おじちゃん違う」
『その小さなお友達はコトダマを使いたいの?』
 華麗にスルー。花の問いに「左様」とクレヨンがうなずく。
「コトダマ?」
 知らない言葉にイッチョメは首をかしげた。
「言葉の魔法みたいなもんだ」
 ブロックが答える。ちなみに何故ブロックがそんなことを知っているかというと……そこはそろそろ察してほしい。
「へぇ~」
「イッチョメ殿、先程の覚え書きを貸して下さらぬか」
「はい、どーぞ」
 イッチョメがメモを渡すと、クレヨンは小さな手で大きな紙をしっかと掴み、大きな声で花の名前を読み上げた。
「はりえんじゅ!」
 すると、ぽんっとブロック達の前に薄い木札が現れた。そこには花の絵が刻印されおり、その下に“HARIENJU”と記されている。絵はおそらくはりえんじゅだろう。
「あやめ、パンジー、ピラカンサス、やまぼうし、ばら……」
 木札はクレヨンの口から名前が出るたびにぽんぽん現れ、横一列に並ぶ。
「いそとま、れんげそう、たんぽぽ、ふうろそう、どくだみ」
 ぽんっ、ぽんっ、ぽんっ、ぽんっ、ぽんっ、
「あまり、りす――あ!!」
 突然の突風。メモをさらわれてしまった!
「しまった! もみげ殿!」
「もみあげだ! 違う! ブロックだ! あー……もう無理だろ」
 とっさに手を伸ばしたものの、間に合わなかった。もはや遠い空の彼方。突風は木札も散らせてしまった。
『春の風が季節の到来を喜んで調子に乗っていたずらしたのよ』
 呆れた口調で花が言う。
「あああ、あと一つだというのに、覚えてないでござる……」
 クレヨンは頭であろう場所を両手で抱えてうなだれた。
「俺もよく見てねぇから覚えてねぇしなぁ」
 ブロックも弱って腕を組む。イッチョメは地面に散らばった木札を見下ろした。
「えーっと、えーっと、やつで!」
『ダメね』
「ゆうぎりそう!」
『ブー』
「うーん、うーん……あ! やまぶき!」
『惜しいわね。隣りの庭なのよ』
「なんと! じゃ、ゆりは!?」
『貴方がイメージしているユリはやっぱり隣り』
「ううぅ……」
 他に名前が出てこない。焦っているため尚更思い浮かばないようだ。
「ブロック殿、何かないか!?」
「すまんが、花の名前はさっぱりだ」
「うぬぬ……あと一つ、あと一つ……」
「……」
 ――イッチョメは地面に散らばった木札を見下ろし、ふと思った。固定概念の少ない子供ゆえの柔軟な発想で、理論的にではなく直感的に、“似ている”と思ったのだった。いそいそとポケットの中から一枚のメモを取り出す。ペティからもらったメモ。大事に折り畳んでしまっていた。
「!」
 メモを見る。そしてやはり柔軟な、拙い思考で、思い至った。

「やぶつばき!!」

 先日ツインドールに教えてもらった花の名前だ。クレヨンがそれだ! という雰囲気でイッチョメを振り返り、そして花達をうかがい見る。
 次の瞬間、地面に無惨に散らばっていた木札が再び宙に浮き、クレヨンが呼んだ順番で横一列に並んだ。
「やった!!」
 クレヨンがガッツポーズを決めた。イッチョメがやったー! と万歳。
 列の最後にやぶつばきの木札が現れ、それらは螺旋を描きながら青い空へと昇っていく。それを三人が目で追いかけると、やがて遙か上空で青い閃光を放ってぱんっと弾けた。
「おおー!」
 思わずブロックが感嘆をもらす。色とりどり、多種多様な花びらが無数に舞い降りてきたのだ!
「すごい、すごーい!!」
 イッチョメがぴょんぴょん跳ねた。それにあわせて肩にいるキンチャクの体もぽんぽん跳ねる。
「かたじけない。イッチョメ殿、もみあげ殿、本当に助かったでござる。これでコトダマが完成するでござる」
 クレヨンが頭を下げた。今度は腰が外れない程度に。
「良かったな」
 とブロックが返す。これで帰れると内心安堵。
「良かったねー!」
「うむ。イッチョメ殿、あとは貴殿が手紙を書くだけでござる」
「!」
「イッチョメ? が何?」
 だが答えを聞くことはできなかった。
 何故なら。
「えっ?」
 ブロック達の足下にぽかっと大きな穴が空いたからだ!
「うおああああああああああぁぁぁぁっ!?」
「きゃーーーーー!」
 ブロックは驚きと恐怖の、イッチョメは愉快そうな叫びをあげながら落ちてゆき――





 ブロックは自室で目を覚ました。
「ゆ……夢……」
 現実に戻ってきたと気付いたとたん脱力する。
「はぁ……」
 まぁ、夢だろうなとは思っていたが、やはり安堵感は半端ない。
「んー」
 続いてブロックの腹の上をうつ伏せで横断していたイッチョメが目を覚ます。その背中の上のキンチャクも起きた。
「オレンジさん……」
 眠気眼で辺りを見回す。
「あ」
 すぐに自分が握っていたことに気付いた。
 手を開くと、折れていた。



 三角頭はなくなってしまうがイッチョメは構わないと答えたので、ブロックはクレヨンを一本に戻してやることにした。方法は以下の通り。
 まずアルミホイルでクレヨンの太さの筒状の入れ物を作り、中に折れたクレヨンを入れる。次にそれを火にかけてクレヨン溶かし、あとは冷やして固めてアルミホイルをはがせば完成だ。イッチョメが巻紙を気に入っていたので、きれいにとっておいたそれも巻き直した。ちなみに何故ブロックが以下略。
「そういえばイッチョメ、お前よく花の名前が分かったな」
 ふと思い出してイッチョメに訊くと、イッチョメはえへへと笑ってポケットから一枚のメモを取り出した。そういえば夢の中でも見ていたそれは、昨日ペティから教えてもらっていた“つづり”のメモだった。
「これ!」
「んん? んー……」
 最初意味が分からず悩んでいたブロックだったが、やがて。
「あ! あー、あー、そうか、そういえばそうだったかもしれんな」
 理解してうなずいた。










 ――さて。
 イッチョメはあらかじめ準備していた四つ切り画用紙をテーブルに広げる。選ぶのはオレンジ色のクレヨン。“あの人”の大好きな色。初めは紫と悩んだけれど、こういうのはやっぱり明るい色の方がいい。
 あの人の好きな明るい色で、ペティに教えてもらったつづりを思い切り書いた。できるだけ大きく、太く、はっきりと、一目で分かるように。そうだ、お花もいっぱい描こう。夢の中で最後に見たあの綺麗な光景のように。
 そんなイッチョメの姿を、折り紙で作ったチェーンで部屋を飾り付けながら、苦笑いでブロックが見守る。ケーキは既に冷蔵庫で待機中だ。あとは他のメンツが揃うのを待つばかり。

 5月の色とりどりの命の祝福を携えて、同じ5月の君に捧ぐ。
 さぁ、パーティを始めよう!



「「「「「HAPPY BIRTHDAY! にじゅーまる!!!」」」」」



 

宮代義善様から頂きました


楽しい!かわいい!楽しい!!!読みながら元気に動くブロック達が本当に生き生きしていて何度も何度も読み返してしまいました。 ブロックとイッチョメのやり取り、ちょっとした行動の全てにそれぞれの”らしさ”が出ていてかわいいわ楽しいわで 脳内が忙しい! 文章なのに映像が浮かぶ…。人様にこうして自分の子をめいいっぱい動かして貰えるというのは本当に嬉しい事で!!! これがまた楽しそうだから尚更抱きしめたくなる可愛さ!!!ブロックとイッチョメのセットは私もよく描くのですが 改めて!この二人はカワイイな!!!と再認識しました!!親バカです(笑)ああもう本当に本当に生き生きしていてたまらなかったです。宮代さん素敵なお祝い小説ありがとうございました!

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